AIと文章対決 前編(面白い話)

最近巷ではAIが流行っている。ここ数年で急速に進化しているらしい。今後、人間の仕事がどんどん奪われていくそうだ。近い将来、俺も無用の長物となってしまうのだろうか。

いや、そんな弱気なことを言っては駄目だ。人間のプライドにかけてAIに打ち勝たなければならない。AIに仕事を取られてたまるか。

妥当AI。必勝しげる。

そんな、部活の横断幕くらい強い気持ちでAIと対峙するのだ。

ということで、俺はAIに挑むことにした。幸いなことに奴らはまだ発展途上らしい。今のうちに叩きのめしておけば「しげるには敵わない」と学習し、二度と俺に逆らうことはないだろう。

「出る杭を打つ」

俺の大好きな言葉だ。

聞いたところによると奴らは文章をつくるのが得意らしい。なるほど、それはちょうどいい。作文なら俺も自信がある方だ。こうやって日々ブログを書くことで文章力が鍛えられているはずである。AIの挑戦、受けて立とう。

今回の相手は天下のグーグルが開発したGemini(ジェミニ)に決めた。最先端の生成AIで、マルチモーダル対応らしい。マルチモーダルに対応している?よくわからないが、俺がマルチモーダルに対応していないことは確かだろう。とにかく「相手に不足なし」といったところか。

ではさっそく対戦を始めよう。ルールは簡単。同じテーマで文章を書いてそのクオリティを競う。テーマは下記の通りに設定した。

●面白い話
●あの曲の続きがあるとしたらどんな歌詞?

まずは「面白い話」部門である。それだけだと幅が広すぎるので、お題も準備した。

●面白い話

① お題:毛
・しげる作
毛深いことに悩んでいる男がいた。全身の至る所に鬱蒼と毛が生えていて、さながらジャングルのようだった。そのせいで異性には全くモテないし、同性には散々馬鹿にされてきた。男は悩んだ末に、全身脱毛を決意した。友人には「せっかくの立派な毛がもったいない」と止められた。だが彼の意思は固かった。
 
施術当日、男はクリニックの待合室で順番を待っていた。すると、どこからともなく一匹の蚊が飛んできた。男はその行方を目で追った。蚊は右に左に方向を変えた後、男の腕に止まった。男の血を吸おうと体を動かしている。その姿からは必死ささえ伝わってくる。だが、生い茂った毛が邪魔をしてうまくいかない。結局、蚊は諦めて隣に座る青年の方へ飛んで行った。青年は施術後のようで、腕も足もツルツルとしていた。蚊はここぞとばかりに彼の腕に針を突き刺して血を吸いだした。毛深い男はそれをぼんやりと眺めていた。

すると、目の前に別の蚊が飛んできて、また自分の毛深い腕に止まった。ここからは先程と同じ展開である。血を吸おうと必死に体を動かす蚊。それを阻む力強い毛たち。結局、二匹目の蚊も標的を隣の青年に変えて飛んで行った。二匹仲良く青年の腕に止まって血を吸っている。おそらく「あの毛深さは反則だよな」などと会話しているのだろう。

そんなことを考えていると、毛深い男のもとに三匹目の蚊が飛んできた。ここまで来ると、男は自分から腕を突き出してやった。三匹目も前の二匹同様、毛をかき分けようと必死に動いている。すると、少しだけ毛の中に侵入することができた。だが、まだ皮膚には到達していない。前に進もうと必死にもがく三匹目。数十秒経過し、三匹目の動きが止まった。どうやら命が尽きてしまったようだ。毛深い男は不謹慎にも誇らしげな気分になった。

その頃、隣の青年はやっと蚊の存在に気づいたらしく、真っ赤になった腕を不機嫌そうに搔きむしっている。これを見て、毛深い男は自分の毛に対して感謝の気持ちを感じた。それだけでなく、誇りであるとさえ感じ始めた。

男は受付に施術のキャンセルを申し入れ、清々しい気分でクリニックを出た。昔から蚊に刺されにくい体質だとは思っていたが、まさか毛が守ってくれていたなんて。男は腕を撫でながら「ありがとう」とつぶやいた。

少しして、男は頭がとても痒いことに気が付いた。どうやら蚊に刺されたらしい。この男、体中毛深いのに、頭だけはつるっパゲだったのだ。

以上がしげる作の話である。続いてGeminiの話を見てみよう。

・Gemini作
夜中の二時、持ち主の佐藤さんが深い眠りにつくと、その顔の上で奇妙な現象が起こります。佐藤さんの両方の眉毛が、まるで芋虫のように「ムクッ」と起き上がるのです。

実は、眉毛は人間が寝ている間に顔から離れ、自由に散歩をする習性があります。彼らは枕を飛び降り、窓の隙間から夜の街へと繰り出します。右眉の「右衛門」と左眉の「左衛門」は、公園のベンチで他の家の眉毛たちと合流し、情報交換に花を咲かせます。

「うちの主人は今日、上司に怒られて八の字になりっぱなしで腰が痛いよ」 「うちは今日、驚きすぎてずっと吊り上がってたから、筋肉痛さ」

眉毛たちは夜風に吹かれながら、自らの「形」で表現される主人の喜怒哀楽を労い合います。ときには野良猫の背中に飛び乗って、スリリングなドライブを楽しむこともあります。

しかし、夜明けが近づくと彼らは大慌てで家に戻ります。なぜなら、目が覚めた時に眉毛が不在だと、主人は「人相書きの犯人」のような顔になってしまうからです。

ある朝、佐藤さんが鏡を見ると、右の眉毛に小さなタンポポの綿毛がついていました。「おや?」と不思議がる佐藤さん。それは、昨夜の散歩の楽しすぎる名残だったのです。

いかがでしたか?次は「実は脇毛たちは、主人の体温を使って秘密のパンを焼いている」という、さらに奇想天外なお話も書けますが、いかがいたしましょうか?

以上

さすが、最先端AI。「毛にまつわる面白い話をつくって」と投げかけただけで、瞬時にこの回答が返ってきた。

まず発想が面白い。眉毛が夜中に散歩してるなんて、悔しいが俺には思いつかない。さらに左右の眉の名前が「右衛門」と「左衛門」って…これには思わず吹き出してしまった。さらに、もし眉毛が家に帰らなかったら…と想像させる部分も秀逸だと言わざるを得ない。そして、タンポポの綿毛も素敵な終わり方だ。

さらにさらに、最後には次の話の提案までしてくれている。どれだけ仕事熱心なんだろう。俺なんて、毛の話を書き上げた満足感で、いまだに次の話を考える気になっていないというのに。

だが、こんなところで負けてはいられない。目的は今のうちにAIの芽を摘むことだ。そう思い直し、俺はシャツの袖をまくった。

②お題:会社
・しげる作
ある会社にAというおバカな若手社員がいた。勘違いによるミスがとても多い男だった。

例えば、ある時、社長宛にとある会合の出席依頼が届いた。様々な組織の幹部が集まるとても重要な会合である。Aは社長から「出席するから、出欠確認の返信葉書を出しておいて」と指示された。その際「『宛』に二重線を引いて『御中』にするように」と念を押された。Aは早速、葉書に必要事項を記入して投函しようとした。ポストに向かおうとするAに社長が「ちょっと見せてみろ」と声をかけた。Aから葉書を受け取った社長は驚愕する。そこには、「御中」ではなく「want you」と書かれていた。

数日後、Aは出勤中に転んで手のひらを擦りむいた。軽傷だったので絆創膏だけ貼って対応した。その日、社長から「〇〇社の社長は会合に出席するのか?」と問われた。Aは「わかりません」と答えた。社長は「すぐに出欠を確認してくれ」と指示した。すると、Aは絆創膏を剥がし「出血はありません」と答えた。社長は呆れて言葉も出なかった。

諸々の事情があり、会合には社長とAの二人で出席することになった。前日、社長はAに「明日の会合の時間は?」と尋ねた。Aは「18時開始、20時終了予定です」と答えた。社長は遅めの時間なので会合の後は会社に戻らずそのまま帰宅しようと思い、Aに「明日は直帰する。お前も直帰でいいぞ」と伝えた。

翌日、社長は自分の目を疑った。Aが「チョッキ」を着て会場に現れたのである。幼稚園児が来ていそうな紺一色のチョッキを着たAを見て、会場がザワついたのは言うまでもない。
 
・Gemini作
老舗食品メーカーに配属された新入社員の加藤くんは、非常に真面目ですが、少し天然なところがありました。ある日、教育係の先輩から「今日は大事な取引先との会食だ。お前もしっかり『ごますり』を忘れるなよ」とアドバイスを受けました。

もちろん先輩は「相手を立てて、機嫌を取れ」という意味で言ったのですが、加藤くんはそれを「物理的な特殊任務」だと勘違いしてしまいました。

会食の席、高級和食店に現れた加藤くんのポケットは、なぜかパンパンに膨らんでいます。取引先の社長が「いやあ、御社の製品は素晴らしい」と上機嫌で話し始めたその時、加藤くんは「今だ!」と立ち上がりました。

「失礼いたします!」と叫ぶやいなや、ポケットからマイすり鉢とマイすりこぎを取り出し、猛烈な勢いでゴマをすり始めたのです。

静まり返る座敷に、響き渡る「ゴリゴリゴリ!」という乾いた音。唖然とする一同を前に、加藤くんは出来立てのすりごまを社長の刺身にふりかけ、「鮮度抜群のごますりでございます!」と爽やかな笑顔を見せました。

一瞬の沈黙の後、社長は大爆笑。「君、面白いね!こんなに直球な『ごますり』は初めてだよ!」

結果として気に入られ、商談は大成功。後日、先輩から「意味が違う」と正座で説教を受けましたが、加藤くんは今でも社内で「セサミ・マスター」という謎の二つ名で呼ばれています。

次は「絶対に出られない会議室」や「シュールな社内清掃」などのお話はいかがでしょうか?

以上

この話もすごく面白かった。偶然にも、俺の考えたストーリーと「若手社員の勘違い」という点で共通している。ただ、AIの凄いところは、この話を一瞬で生成するところだ。俺はというと、ニ時間以上悩んでやっと完成させた。

まずい。AIに人間の凄さを思い知らせるはずが、逆の方向に進んでいる。

ここで俺はあることが気になった。

AIの方は俺の文章をどう思っているのだろうか。

もしかしたら「しげるさんには敵いません」と負けを認めるかもしれない。もしくは「ここはこうした方がいい」などと指摘をしてくるのだろうか。

俺は早速確かめてみることにした。入力欄に自分の文章を貼り付けて、その下に「以上が俺の作った話。感想は?」と打ち込んだ。

次回に続く

コメント

タイトルとURLをコピーしました