「目標を達成したい」
これは全人類共通の願望だ。大小の違いはあれど、誰しも何らかの目標を持っているだろう。
「目標を達成できない」
では、これは全人類共通の悩みだろうか。
答えは「NO」だ。人間には目標を達成できる人(=やり抜ける人)と、達成できない人(=やり抜けない人)がいる。
では、その違いはなんなのだろう。
その答えが明確に示されているのが今回紹介する『やり抜く人の9つの習慣』だ。著者は社会心理学者でモチベーション科学の第一人者でもあるハイディ・グラント・ハルバーソン氏。本書の原型となったハーバードビジネスレビュー誌の記事は、当時過去最大の閲覧数を記録している。
この本を一言で表現すると「目標達成に必要な要素を凝縮した本」だ。
様々な要素を集めて重要な部分だけを残し、それらを平易な言葉でコンパクトにまとめている。例えるなら「栄養素が詰まったサプリメント」のような書籍だと思う。
本書では、目標の達成に必要なものは「才能」ではなく特定の「思考や行動」だと説いている。
では、どのような思考や行動が必要なのか。成功者に聞いても明確な答えは出ない。なぜなら彼らはそれを無意識でやっているから。
著者は、目標達成の裏に秘められた成功法則を心理学の研究結果をもとに「9つの習慣」として整理した。その集大成が本書なのである。
では、ここからはその9つの習慣を紹介していく。
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①目標に具体性を与える
まず重要なのは目標の立て方だ。本当に成功したいなら「痩せる」や「稼ぐ」など、漠然とした目標を設定してはならない。
「痩せる」ではなく「5キロ痩せる」
「稼ぐ」ではなく「年収1,000万円稼ぐ」
といったように、目標に具体性を与えることが重要だ。
具体的な目標のメリットとしては「メンタル・コントラスト」の効果がある。これは「理想と現実のギャップ(コントラスト)を意識することでモチベーションが高まる効果」のことをいう。
この効果を得るためには、まず成功した自分を想像し、その時の感情を味わうことが必要だ。喜びや満足感をできるだけリアルにイメージする。次に、そこに至るまでの障害について考える。目標達成に向けて乗り越えるべき壁や課題を明確にするのだ。すると、理想と現実の差を認識し「今の自分に足りないもの」や「今すべきこと」を自覚できるようになる。それが、目標達成に向けた最善の行動につながるというわけだ。
本書では採用試験の例が挙げられている。採用通知を受け取った自分をイメージすることで「今の応募書類では弱い」という障害に気づき、それが「履歴書を書き直す」という行動につながっていく。
メンタル・コントラストの効果を得るためには、目標が具体的でなければならない。なぜなら、そうでなければ達成した姿を明確にイメージすることができないからだ。また、到達点が曖昧だと、現在との差を正確に捉えることができない。それが「これくらいでいいか」といった妥協や、「どうでもいいや」といった挫折につながってしまう。
以上のことから、まずは目標を具体的かつ詳細に考え抜くことが重要なのである。
②目標達成への行動計画をつくる
次に重要なことは、やるべき行動を日々の計画に落とし込むことだ。①で決めた具体的な目標を達成するために「いつ」「何を」すべきか決めておく。
しかし、三日坊主という言葉があるように、人間の意志はそれほど強いものではない。「やるべき行動」を決めていても、ついサボってしまうことがある。本書では、そんな事態に対処する有効な手法として「if-thenプランニング」が紹介されている。これは「こうなったら、こうする」というルールを予め決めておく方法である。その効果は科学的にも立証されているそうだ。
(if-thenプランニングの例)
・〇曜日の〇時になったらジムで〇時間運動する
・家に帰ったらランニングウェアに着替える
・朝起きたらストレッチをする
・〇階以下なら階段を使う
「しげる流 習慣化メソッド」の記事にも記載している通り、俺は「風呂に入ったらまずスクワットをする」というルールを設定している。真っ裸で上下運動することには賛否両論があるだろうが、俺には関係ない。要は、自分がスッと行動に移れるルールであれ良いのだ。
if-thenプランニングのメリットは、行動を「自動化」できる点だ。やるかやらないかで悩む必要がなくなり、やるべき時が来たら意識せずに行動できるようになる。目標達成に向けた行動管理において、これほど有効な手法は他に無いだろう。
③目標までの距離を意識する
次に重要なのが、目標までの距離を意識することだ。そのためには定期的なフィードバックが欠かせない。例えば、ダイエットであれば毎日体重を測る、学業であれば定期的に模擬試験を実施する、などにより進捗状況のモニタリングを行うと良い。
本書では、フィードバックする際の考え方として「これまで思考」と「これから思考」が紹介されている。「これまで思考」とは「どこまでやったか」を意識すること、反対に「これから思考」とは「あとどれだけやらなければならないか」を意識することである。
結論から言うと、後者の「これから思考」のフィードバックの方が目標達成に有効だ。「これまで思考」の強い人は、早い段階で達成感を持って気が緩んでしまう。その反面「これから思考」であれば「これからやるべきこと」を意識してモチベーションを高められる。「5キロ減量の目標に対して2キロ痩せたなら、「2キロ痩せた」ではなく「あと3キロ痩せるぞ!」と考えよう。
④現実的楽観主義者になる
よく「前向きに考えれば必ずうまくいく」とか「信じていれば夢は叶う」などと言われるが、果たしてそれらは真実だろうか。
実はポジティブ思考には落とし穴がある。それは「目標は『簡単に』達成できる」と信じてしまうことだ。本書ではこれを「非現実的な楽観主義」と呼んでいる。人間は『簡単』と考えると油断してしまうため、非現実的な楽観主義者は目標達成のための努力を怠ってしまう。
望むだけで叶う夢など存在しない。だからこそ「目標は『簡単に』達成できる」ではなく「目標は『努力すれば』達成できる」と考えるべきだと著者は説いている。つまり「非現実的な楽観主義者」ではなく「現実的な楽観主義者」になる必要があるということだ。
現実的な楽観主義者は「成功のためには最善の努力が必要」と理解しているので成功できる。問題や障害を考えることは、決してネガティブなことではないのだ。
⑤「成長すること」に集中する
次に大切なのは「成長」にフォーカスすることだ。
「どうせ自分には才能がない」
「失敗するに決まっている」
そんな風に考えて挑戦を諦めてしまった経験はないだろうか。
成功者は例外なく「能力は努力次第で伸ばせる」と信じている。だから、失敗を恐れず行動し、たとえ失敗したとしても自分の「成長」に目を向けることができる。
一説には「失敗してもいい」と開き直った方が失敗の可能性は低くなると言われている。つまり、能力を発揮することを阻害する最大の要因は不安感なのだ。俺がいつも失敗する理由がわかった気がする…
「失敗」ではなく「成長」に集中しよう。成長を続ければ、いつか必ずゴールに辿り着く。
⑥「やり抜く力」を持つ
少し前から、Grit(グリット:長期目標に向かうときの粘り強さとやる気)という言葉が注目されている。いくら大きな目標を掲げても、すぐに諦めてしまっては意味がない。どの分野においても、成功は地道な努力を続けた結果である。そして、それを可能にするのがGritなのだ。
「自分にはそんな力はない」
そう考えるのは早計だ。やり抜く力は生まれつきの資質ではない。後天的に伸ばせるものだ。
やり抜く力を養う上でポイントとなる考え方として、本書では次の二つが解説されている。皆さんは、自分の能力についてどちらの考え方を持っているだろうか。
A 拡張的知能観:能力は努力次第で高められるという考え方
B 固定的知能観:能力は生まれ持ったもので不変であるという考え方
結論、やり抜く力を発揮して目標を達成できるのは、Aの考え方を持つ人である。
著者曰く、どちらの考え方を持つかによって、うまくいかない時に「何のせいにするか」が変わってくる。Aの考え方を持つ人は、自分でコントロールできること(努力が足りなかった、準備が不足していた、など)を理由にする。反面、Bの考え方を持つ人は、自分でコントロールできないもの(才能が無い、生まれ持った能力が低い、など)のせいにする。
目標を達成するためにはGritを発揮することが必要。そして、そのためには「自分ならもっとできる」という拡張的知能感が欠かせないのだ。
⑦筋肉を鍛えるように意志力を鍛える
「習慣が継続できない」「すぐにサボってしまう」など、意志が弱いことで悩んでいる人は多いだろう。意志力は筋力と同じで、使わなければ衰える。だが逆に、定期的に使うことで鍛えられる性質もある。
具体的な強化方法としては、小さなことでも良いので新しいことや気が進まないことに取り組むことが効果的だ。習慣はいつも誘惑との戦いである。誘惑に打ち勝つ経験を繰り返すことで、少しずつ意志力が強化されていく。すると、苦痛だったことが当たり前にできるようになり、次の習慣へと発展していく。例えば、軽い運動の習慣を続けることで意志力が鍛えられ、喫煙や飲酒の習慣が無くなったりするのだ。
些細なことで構わないので、価値があると思えることを続けてみる。例えば、帰宅したら靴を揃える、近所の人に挨拶をする、リモコンを必ず定位置に置く、などなんでも構わない。それを継続することで、ボディビルダーの筋肉のような力強い意志力を手に入れることができる。
⑧自分を追い込まない
⑦で「意志力を鍛える」ことの重要性を説明したが、いくら鍛え上げられた意志力でも、筋肉と同じで使えば消耗してしまう。よって、目標を達成するためには、限りある意志力を効率よく使う必要がある。本書では、その具体策として次の三つが紹介されている。
- 意志力に頼り切らない
まずは意志力が有限であると認識する。そして、誘惑のある状況に立ち向かうのではなく、できる限り誘惑の無い状況に身を置く。例えば、飲酒量を減らしたいなら家にお酒を置かないことや夜の繁華街を歩かないこと、減量したいならスーパーやコンビニではスイーツコーナーの前を通らないことなどである。 - 大きな目標は一つに絞る。
難易度が高いゴールほど意志力の消耗は激しくなる。そのため、大きな目標は一つに絞るべきだ。複数の大きな目標を持つと、意志力が分散してしまって「二兎を追う者は一兎をも得ず」の状況になりかねない。成功確率を上げるためには「意志力の集中」が肝心だ。 - 少しずつではなく、一度に完全にやめる
何かをやめるときは、段階的にやめるよりも、一度に完全にやめる方が良い。その方が誘惑と戦う場面が減り、意志力の消耗を避けられるからだ。
⑨「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する
人間の脳は「あることを考えないように努力すると、逆に頭の中はそのことでいっぱいになる」という性質がある。例えば「シロクマのことは考えるな」と言われると、どうしてもシロクマのことばかり考えてしまう。
以上のことから、「やめたいこと」があるなら「やめなければ」と考えるのではなく「何をやるべきか」を考えた方が効果的だと言える。この手法には、②でも触れたif-thenプランニングが活用できる。例えば次のように「やめたいこと」を「やること」に置き換えてみる。
・ビールが飲みたくなったら炭酸水を飲む
・勉強中にテレビやスマホを見たくなったら瞑想をする
・イライラしたら深呼吸をする
自分事で恐縮だが、俺は「かっぱえびせん」が大好きだ。大袈裟ではなく、以前は週に3〜4袋ほど食べていた。商品のキャッチコピー通り「やめられない、とまらない」状態だったのである。だが、その行動がダイエットの障害になっていることは明白だった。そのため俺は、断腸の思いでかっぱえびせんとの別れを決意した。
・かっぱえびせんを食べたくなったら「きゅうり」を一本食べる
このようなルールを決め、かっぱえびせんの代わりにきゅうりを常備して実行に移した。すると、それほど苦労せずにやめることができたのである。ちなみに、ダイエットが落ち着いた今は月1袋くらいの程よい距離感でかっぱえびせんと付き合っている。
「やめる」を「やる」に置き換える。これが悪習慣を断つ正しい方法なのだ。
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ということで今回は『やり抜く人の9つの習慣』を紹介させていただいた。
より詳しい内容が知りたい方は、是非実際に書籍を手に取って欲しい。サプリメントも一粒飲んだだけでは効果は出ない。この書籍も同じだ。何度も読み返すことで理解が深まり、自分の力になってくれる。


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